【完全版】マーケティングファネルとは?基本から作り方、BtoCでの成功事例まで徹底解説

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「Instagramは毎日更新してるけど、なかなか売上に繋がらない…」
「広告を打っても、その時だけしかアクセスが増えない…」
「うちのブランドのファンを増やすには、次は何をすればいいんだろう?」

ECサイトの店長さんや、個人向けブランドのマーケティング担当者の方なら、こんな風に感じたことが一度はあるのではないでしょうか。一つ一つの施策は頑張っているのに、それがどうやってお客様の「買いたい!」という気持ちに繋がっているのか、全体像が見えにくくなってしまうのは、多くのブランドが抱える共通の悩みです。

もし、あなたがこのような状況にあるなら、ぜひ知ってほしいのが「マーケティングファネル」という考え方です。

この記事でわかること

マーケティングファネルは、お客様があなたのブランドや商品を偶然知り、心を惹かれ、購入し、そしてファンになってくれるまでの道のりを「地図」のように可視化してくれる、とても強力な考え方です。

この記事では、マーケティングの初心者の方でもつまずかないように、BtoCビジネスの具体例をたっぷり交えながら、以下の内容を分かりやすく解説します。

  • そもそもマーケティングファネルって何?という基本のキ
  • お客様が商品を買うまでの心の動きと、ファネルの各段階
  • 明日から使える、実践的なマーケティングファネルの作り方【4ステップ】
  • ファンが新たなファンを呼ぶ、現代のマーケティング理論

この記事を読み終える頃には、バラバラだった施策が一本の線で繋がり、自信を持って「次の一手」を考えられるようになっているはずです。

目次

マーケティングファネルとは?お客様の心を掴むための基本の考え方

マーケティングファネルの定義

マーケティングファネルとは、お客様が商品を認知してから購入に至るまでの心理的なプロセスを、段階的に図式化したモデルのことです。

マーケティングファネルの基本図(シンプルな漏斗のイラスト)
顧客の数が段階的に絞られていく様子が「ファネル(漏斗)」に似ています

この図のように、上から下へと進むにつれて対象となるお客様の数が絞られていく形が、理科の実験で使う「ファネル(漏斗・じょうご)」に似ていることから、この名前が付きました。

  • ファネルの上(入り口): あなたのブランドをまだ知らない、潜在的なお客様がたくさんいる状態。
  • ファネルの下(出口): 実際に商品を購入してくれた、熱量の高いお客様。

例えば、Instagramで1万人にあなたの商品が見られても、実際にプロフィールに飛んでくれるのは1000人、さらにECサイトを訪れるのは100人、最終的にカートに入れて買ってくれるのは数人…といったように、お客様が次の段階へ進むごとにどんどん少なくなっていく様子を視覚的に捉えたものが、マーケティングファネルなのです。

補足情報

この考え方を使うことで、「どの段階でたくさんのお客様の興味が離れてしまっているのか?」という、マーケティング活動の課題を発見しやすくなります。

なぜ今、マーケティングファネルが重要なのか?

「なんとなくイメージは湧いたけど、なぜそんなに重要なの?」と思いますよね。その理由は、私たち消費者の購買行動が、昔に比べてとても複雑になっているからです。

テレビCMを見てお店に行って買う、というシンプルな時代は終わりました。現代の私たちは、購入までに様々な情報に触れ、感情が動かされ、意思決定をします。

STEP

認知

Instagramで好きなインフルエンサーが紹介しているのを見て、商品を初めて知る。

STEP

興味・関心

ハッシュタグ検索や口コミサイトで、他の人の投稿やレビューをチェックする。

STEP

比較・検討

Instagramで好きなインフルエンサーが紹介しているのを見て、商品を初めて知る。

STEP

購入

数日後、LINEに届いた「初回限定10%OFFクーポン」が決め手になって購入する。

こんな複雑な道のりの中で、ただやみくもに商品をアピールしても、なかなか心には響きません。そこでマーケティングファネルが役立ちます。

マーケティングファネルを導入するメリット

  • 課題の可視化: 「認知はされているのに、ECサイトまで来てくれていない」「サイトには来るけど、購入一歩手前で離脱(カゴ落ち)が多い」など、どの段階に課題があるのかが一目瞭然になります。
  • 施策の最適化: お客様の心の準備状況に合わせて、「知ってもらうための施策」「好きになってもらうための施策」「買う決心をしてもらうための施策」を打ち分けられるようになります。
  • LTV(顧客生涯価値)の向上: 購入後のお客様との関係づくりまで設計することで、リピート購入や口コミに繋がり、長期的な売上を安定させることができます。

お客様の心の動きに寄り添い、最適なタイミングで最適なアプローチをするための「おもてなしの設計図」。それがBtoCマーケティングにおけるファネルの価値なのです。

マーケティングファネルの各段階と代表的なモデル

マーケティングファネルにはいくつかの種類がありますが、ここではBtoCビジネスで特に重要な考え方と、代表的なモデルを3つご紹介します。

TOFU/MOFU/BOFU:3つの階層

まず、どんなファネルにも共通する、お客様の熱量を分ける考え方が「TOFU・MOFU・BOFU」です。

TOFU (認知)
MOFU (興味・検討)
BOFU (購入)

TOFU (Top of Funnel): ファネルの最上層

  • お客様の状態: まだあなたのブランドを知らないか、ぼんやりとしたニーズを持っている段階。(例:「夏に着る可愛いTシャツないかな〜」)
  • ブランドの目的: まずは存在を知ってもらうこと。共感を呼ぶコンテンツで、ブランドの世界観に触れてもらうこと。

MOFU (Middle of Funnel): ファネルの中間層

  • お客様の状態: ブランドを認知し、興味を持っている。他のブランドと比較したり、自分に合うか吟味している。(例:「このブランドのデザイン好きかも。他の商品はどうかな?」)
  • ブランドの目的: ブランドへの理解を深めてもらい、「自分ごと化」してもらう。信頼関係を築き、購入候補に入れてもらうこと。

BOFU (Bottom of Funnel): ファネルの最下層

  • お客様の状態: 購入の意思がかなり固まっている。最後の決め手や、買い物の失敗をしないための安心材料を求めている。(例:「やっぱりこれが欲しい!」「サイズ感は大丈夫かな?」)
  • ブランドの目的: 不安や疑問を解消し、スムーズに楽しく購入体験をしてもらうこと。

【基本モデル】パーチェスファネル

最も古典的で有名なのが「パーチェスファネル」です。これは、消費者の購買決定プロセスを示した「AIDA(アイダ)モデル」がベースになっています。

AIDAモデルとは
  • Attention(注意・認知)
  • Interest(興味・関心)
  • Desire(欲求)
  • Action(行動・購入)

このAIDAの流れを、BtoCの買い物シーンに当てはめてみましょう。

  • 認知 (Attention):
    「この服、可愛い!」「こんな便利なコスメがあったんだ」と初めて知る。
    → ブランドのアプローチ:InstagramやTikTokでの発信、インフルエンサー投稿、雑誌掲載など

  • 興味・関心 (Interest):
    「このブランドの世界観、好きかも」「もう少し詳しく見てみたい」と感じる。
    → ブランドのアプローチ:ブランドサイトのブログ、コンセプトページ、YouTubeでの商品紹介動画など

  • 比較・検討 (Desire):
    「これが欲しい!」「他の人の評価はどうなんだろう?」と具体的に考え始める。
    → ブランドのアプローチ:口コミサイトのレビュー、スタッフによるコーディネート提案、インスタライブでの質問回答など

  • 購入 (Action):
    「よし、これを買おう!」と決断する。
    → ブランドのアプローチ:送料無料キャンペーン、初回限定クーポン、分かりやすい決済画面など

【応用モデル】ダブルファネル

パーチェスファネルは「購入」をゴールとしていますが、ファンが重要なBtoCビジネスでは、「購入後」が本当のスタートです。一度買ってくれたお客様に、いかにブランドを好きになってもらい、リピート購入や口コミに繋げるかが成長のカギとなります。

そこで重要なのが「ダブルファネル」という考え方です。これは、購入までのファネルと、購入後のファン化までを描くもう一つの逆さのファネルを組み合わせたモデルです。

ダブルファネルのイメージ図
購入を起点に、ファン化・推奨のファネルが広がります
購入後のファネルの段階

  1. 継続: 商品を使い続けてもらう、リピート購入してもらう。
  2. 紹介: 商品やサービスに満足したお客様が、その良さを友人や家族、同僚などに伝え、新たな顧客を呼び込んでくれる。
  3. 発信: 「このコスメ最高!」とSNSに投稿してもらう(ユーザー生成コンテンツ)。

お客様による好意的なSNS投稿(UGC)は、どんな広告よりも信頼性の高い情報として、新たな潜在顧客(ファネルの入り口)を生み出してくれます。

【4ステップで完成】実践的なマーケティングファネルの作り方

「理論は分かったけど、じゃあ具体的にどうやって自社のファネルを作ればいいの?」 ここからは、いよいよ実践編です。オーガニックコスメのD2Cブランドを例に、4つのステップでファネルを作ってみましょう。

STEP

ターゲット(ペルソナ)の解像度を上げる

ファネル作りで最も重要なのが、「誰に」商品を届けたいのかを明確にすることです。ターゲットが曖昧なままでは、どんなメッセージも響きません。ここでは、理想のお客様像である「ペルソナ」を設定します。

ペルソナ設定の項目例(BtoC)
  • 基本情報: 氏名、年齢、職業、居住地、年収
  • ライフスタイル: どんな毎日を送っているか、趣味、価値観
  • 悩み・願望: どんなことに困っていて、どうなりたいと思っているか
  • 情報収集: どんなSNSをどのくらいの頻度で見るか、好きな雑誌やインフルエンサーは誰か
  • 購買行動: どこで服やコスメを買うことが多いか、購入の決め手は何か

例:「東京都目黒区在住の美咲さん(28歳)、IT企業勤務。最近、敏感肌に悩み始め、Instagramで #オーガニックコスメ を検索するのが日課…」のように、まるで実在するかのように具体的に設定するのがポイントです。

STEP

カスタマージャーニーマップを作成する

ペルソナができたら、次はその人がブランドを知ってファンになるまでの「旅(ジャーニー)」を可視化します。これが「カスタマージャーニーマップ」です。

横軸にファネルの段階、縦軸に「行動」「感情」「接点」「課題」などを設定し、表を埋めていきましょう。

段階 行動 感情・思考 接点 ブランド側の課題
認知 Instagramで好きなモデルがPR投稿しているのを見る。 「このパッケージ可愛い!肌に優しいんだ、気になるな」 Instagram広告、インフルエンサー投稿 まずはブランド名を知られていない。
興味関心 ブランドの公式アカウントをフォロー。ストーリーズや投稿をチェック。 「世界観が好き。開発者の想いにも共感するな」 Instagramアカウント、ブランドサイトのブログ 商品の魅力やブランドの想いが伝わっているか?
比較検討 ハッシュタグで他の人の口コミを検索。公式サイトで成分や価格を確認。 「使い心地はどうなんだろう?値段は少し高いけど…」 UGC(口コミ投稿)、口コミサイト、公式サイト 他ブランドとの違いは?価格への納得感はあるか?
購入 LINE登録でもらえる初回クーポンを使い、ECサイトで購入。 「お得に買えるなら試してみよう!届くのが楽しみ」 LINE公式アカウント、ECサイト カゴ落ちは起きていないか?決済はスムーズか?
ファン化 商品が届き、使い心地の良さに感動。商品の写真を撮ってSNSに投稿。 「すごく良かった!友達にも教えたい。次の新商品も気になる」 同梱物、アフターフォローメール リピートや口コミに繋がる仕掛けはあるか?
カスタマージャーニーマップ作成例(オーガニックコスメブランドの場合)
STEP

各段階のKPIを設定する

ファネルがうまく機能しているかを測る「ものさし」として、KPI(重要業績評価指標)を設定します。各段階で具体的な数値目標を決めましょう。

認知段階 (TOFU) のKPI例
  • 広告の表示回数、SNSのリーチ数
  • Instagramプロフィールのアクセス数
  • Webサイトへの流入数(セッション数)
興味・関心段階 (MOFU) のKPI例
  • Instagramのフォロワー増加数、エンゲージメント率
  • LINE公式アカウントの友だち追加数
  • ECサイトの「お気に入り」登録数
比較・検討段階 (BOFU) のKPI例
  • ECサイトのカート投入率
  • 購入率(CVR)
購入・ファン化段階のKPI例
  • 購入数、顧客単価(AOV)
  • リピート率
  • UGC(ハッシュタグ付き投稿)の件数
STEP

各段階に合わせた具体的な施策をマッピングする

最後の仕上げです。これまでのステップで明確になった情報に基づき、具体的なマーケティング施策を各段階に配置(マッピング)していきます。

段階 目的 具体的な施策
認知(TOFU) まずは知ってもらう、世界観に触れてもらう ・Instagram/TikTokでの発信
・インフルエンサーマーケティング
・Web広告(SNS広告、ディスプレイ広告)
・雑誌やWebメディアへの掲載
興味・関心(MOFU) ブランドを好きになってもらう、関係性を築く ・LINE公式アカウントでの情報発信
・Instagramのライブ配信
・開発秘話などのブログコンテンツ
・メルマガ登録の促進
比較・検討(BOFU) 買う理由を後押しする、不安を取り除く ・購入者レビュー(UGC)の活用
・送料無料キャンペーン
・チャットによる相談対応
・期間限定の割引クーポン配布
購入後(ファン化) ファンになってもらい、リピート・口コミを促す ・サンクスメール、丁寧な梱包
・購入者限定のコミュニティ
・SNSでのハッシュタグ投稿キャンペーン
・ポイントプログラム
ファネルの段階別・施策マッピングの具体例

BtoCマーケティングにおけるファネル活用の成功事例

事例:オリジナルTシャツを販売するB社のケース

【課題】
こだわって作ったTシャツなのに、広告を打ってもなかなか売れない。ブランドの想いが伝わっていないと感じていた。

【ファネル戦略】

  1. TOFU (認知): 「#Tシャツコーデ」などの人気ハッシュタグで、スタッフやモデルがおしゃれな着こなしを毎日投稿。ライフスタイル提案に徹した。
  2. MOFU (興味・関心): Instagramのストーリーズで、Tシャツの素材のこだわりや、生産工場の様子を動画で紹介。フォロワーからの質問に答えるインスタライブを毎週実施。
  3. BOFU (購入): ライブ配信中に限定クーポンを発行。公式サイトには、購入者の身長別の着用レビューを大量に掲載し、サイズ感の不安を解消した。
  4. ファン化: 購入者に対し、「`#B社Tシャツと過ごす夏`」というハッシュタグでの投稿を呼びかけるキャンペーンを実施。素敵な投稿は公式アカウントで紹介した。

【結果】
UGC(ユーザー投稿)が爆発的に増加し、それが新たな広告となって新規顧客を呼び込む好循環が生まれた。広告費をほとんどかけずに、前年比で売上300%を達成し、熱狂的なファンコミュニティが形成された。

マーケティングファネルの次に知っておきたい「フライホイールモデル」

最後に一つ、発展的な概念をご紹介します。それが「フライホイールモデル」です。

フライホイールとは、「弾み車」のことで、一度回転させるとその勢いで回り続ける装置のことです。マーケティングファネルが直線的なモデルだったのに対し、フライホイールはお客様の満足や喜びが、事業を成長させるエネルギーになるという考え方です。

フライホイールモデルにおける顧客の成長(Growth)

フライホイールモデルにおける顧客の成長(Growth)は、一度商品やサービスを購入していただいたお客様が、さらに自社のファンとなり、自発的に他者へ推奨することで、新たな顧客を呼び込む力となるプロセスを指します。

フライホイールモデルのイメージ図
顧客満足が中心となり、成長のサイクルを生み出します
フライホイールモデルの3つの段階

  • Attract(惹きつける): 共感を呼ぶコンテンツで、お客様を惹きつける。
  • Engage(信頼関係を築く): お客様に寄り添い、楽しく買い物ができる関係を築く。
  • Delight(満足させる): 商品やサービスで感動させ、期待を超える体験を提供する。

このモデルの最も重要なポイントは、「Delight(満足させる)」の部分です。商品に感動したお客様の口コミが、何よりも信頼できる広告となり、新しいお客様を惹きつけるpowerfulなエネルギーとなって、フライホイールの回転をさらに加速させるのです。

まとめ:お客様の心に寄り添い、愛されるブランドを育てよう

今回は、お客様との関係づくりの設計図となる「マーケティングファネル」について、BtoCビジネスの視点から詳しく解説してきました。最後に、今日のポイントを振り返ってみましょう。

この記事のまとめ
  • マーケティングファネルとは、 お客様が認知から購入、そしてファンになるまでの心理プロセスを可視化したモデル。
  • ファネルは主に、 認知(TOFU)、興味・関心(MOFU)、購入(BOFU)の3つの階層で考える。購入後のファン化まで描く「ダブルファネル」がBtoCでは特に重要。
  • ファネルの作り方は4ステップ。 ①ペルソナ設定 → ②カスタマージャーニー作成 → ③KPI設定 → ④施策マッピング の順で進める。
  • ファネル思考の先にあるのが、 お客様の満足を成長のエンジンにする「フライホイールモデル」。お客様のUGCや口コミが、新たな顧客を呼ぶ力になる。

もしかしたら、「やることがいっぱいで大変そう…」と感じたかもしれません。でも、大丈夫です。最初から完璧なファネルを作る必要はありません。

まずは、あなたのブランドの「理想のお客様(ペルソナ)」が、どんな時に笑顔になり、どんな情報に心を動かされ、どうやってあなたの商品と出会ってくれるのか、その「物語」を想像することから始めてみてください。

その物語こそが、お客様に長く愛されるブランドを育てる、最高のマーケティングファネルの第一歩です。

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この記事を書いた人

8年以上のEC業界経験を持つECのスペシャリスト。30社以上のECサイト改善を手がけ、UI/UXの改善・CVR向上を実現。デジタルマーケティング戦略の立案から実行・改善までを一貫して担当。

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