ECサイト分析の完全ガイド|売上を伸ばす10の必須KPIと実践的改善手順

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「ECサイトの売上、最近伸び悩んでいるな…」
「新しい商品を投入したのに、思ったように売れない…」
「広告を出しているけど、本当に効果があるのかよくわからない…」

ECサイトを運営していると、こんな悩みにぶつかることはありませんか?日々の業務に追われ、「なんとなく」の感覚でサイトを運営してしまいがちですが、その状態では売上を安定して伸ばしていくのは難しいかもしれません。

その解決策こそが、「ECサイト分析」です。

この記事でわかること

「分析」と聞くと、「難しそう」「専門家じゃないと無理」と感じてしまう方も多いかもしれませんね。でも、ご安心ください。この記事では、ECサイト分析の初心者の方でも、明日からすぐに実践できる具体的な手順と、見るべきポイントをわかりやすく解説します。

この記事を最後まで読めば、あなたのECサイトの「健康状態」が数字で明確になり、課題がどこにあるのか、次に何をすべきかが見えてくるはずです。専門的なツールとにらめっこするだけが分析ではありません。お客様の姿をデータから読み解き、売上アップへの最短ルートを見つけるための、実践的な冒険に一緒に出かけましょう!

目次

なぜECサイトに分析が不可欠なのか?3つの目的を理解しよう

そもそも、なぜECサイトの分析は「やったほうがいい」のでしょうか?面倒な作業に見えるかもしれませんが、分析にはそれ以上の価値をもたらす明確な目的があります。ここでは、分析を行う3つの大きな目的を理解して、モチベーションを高めていきましょう。

目的1:現状と課題の正確な把握

ECサイトの運営は、医者が患者を診察するのに似ています。「なんとなく調子が悪い」という患者(サイト)に対して、まずは体温や血圧を測り、どこに問題があるのかを客観的なデータ(数字)で把握する必要があります。

  • そもそも、サイトにお客様は来てくれているのか?(集客の問題)
  • お客様は来てくれているのに、なぜか商品を買わずに帰ってしまうのか?(接客・サイト内の問題)
  • 一度買ってくれたお客様が、もう一度来てくれないのか?(リピートの問題)

これらを感覚ではなく、数字で正確に把握することが、すべての改善の第一歩です。分析によって、「集客はできているが、スマホサイトでの購入率が極端に低い」といった具体的な課題を発見できるのです。

目的2:施策の効果測定と改善

あなたはこれまで、様々な施策を打ってきたはずです。例えば、新しいバナーの設置、SNSでのキャンペーン、広告の出稿など。しかし、それらの施策が本当に売上に貢献したのか、正確に把握できていますか?

ECサイト分析を行えば、施策の前後でどんな数字がどう変化したのかを測定できます。

具体例

「広告を打ったら、サイトへの訪問者数は2倍になった。でも、購入率は半分に下がった。つまり、広告で集めたお客様は、求めている層とズレていたのかもしれない。」

このように、施策の結果を正しく評価することで、「うまくいった施策は継続・拡大し、うまくいかなかった施策はやめる・改善する」というPDCAサイクルを回せるようになります。これが、ECサイトを継続的に成長させるためのエンジンになるのです。

目的3:顧客理解の深化

ECサイトは、実店舗と違ってお客様の顔が直接見えません。しかし、データは「お客様の足跡」そのものです。分析ツールを使えば、お客様がどんな言葉で検索してあなたのサイトにたどり着き、どのページを熱心に見て、どの商品で迷い、なぜ購入をやめてしまったのか、といった声なき声を聞くことができます。

  • 「『商品A + 使い方』というキーワードで来る人が多いなら、商品Aのページに使い方の動画を載せてみよう」
  • 「多くの人が送料のページを見た後にサイトを去っているなら、送料の表示方法が分かりにくいのかもしれない」

このように顧客の行動を理解することで、より使いやすく、より魅力的なサイトへと改善し、顧客体験(UX)を高めることができます。結果として、それが売上やファンの増加に繋がるのです。

ECサイト分析の全体像|始める前の3つの準備

さて、分析の重要性がわかったところで、いよいよ実践です。しかし、いきなりデータを見始めても、情報の海で溺れてしまいます。そうならないために、まずはコンパスと地図を用意する「準備」から始めましょう。

STEP

KGI(最終目標)とKPI(中間指標)の設定

まずは、あなたのサイトが目指すゴールを決めます。これをKGI(Key Goal Indicator / 重要目標達成指標)と呼びます。

  • KGIの例: 「半年後の月商を500万円にする」「年間の利益を1,000万円にする」

KGIが決まったら、その大きなゴールを達成するための中間目標を設定します。これがKPI(Key Performance Indicator / 重要業績評価指標)です。ECサイトの売上は、基本的に以下の式で成り立っています。この要素を分解してKPIを設定するのがおすすめです。

ECサイト売上の公式

売上 = セッション数 × CVR(購入率) × 顧客単価

この式に当てはめて、KGIから逆算してみましょう。

KPI設定の例

KGI:月商300万円

  • KPI① CVR(購入率): 2%を目指す
  • KPI② 顧客単価: 5,000円を目指す
  • KPI③ セッション数: 30,000セッションを目指す

(計算式:30,000セッション × 2% × 5,000円 = 300万円)

このようにKPIを設定することで、日々の分析で「今月はセッション数は達成できそうだけど、CVRが低いからテコ入れしよう」といった具体的なアクションが考えられるようになります。

STEP

必須ツールの導入と設定確認

次に、分析に必要な道具を揃えましょう。幸いなことに、無料で非常に高機能なツールがあります。最低限、以下の3つは必ず導入・設定しておきましょう。

  1. Google Analytics (GA4)
    サイトのアクセス状況を把握するための必須ツール。「訪問者数」「滞在時間」「どのページが見られているか」など、サイト内のあらゆるデータを計測できます。
    重要ポイント: ECサイトの場合、必ず「eコマース設定」を有効にしてください。これにより、商品ごとの売上や購入率などを計測できるようになります。
  2. Google Search Console(サーチコンソール)
    ユーザーがあなたのサイトに訪問する前の行動がわかるツール。「どんな検索キーワードでサイトが表示されたか」「どのくらいの確率でクリックされたか」などを分析できます。Googleからのサイト評価を確認する上でも不可欠です。
  3. ヒートマップツール
    サイトに訪れたユーザーの動きを、サーモグラフィーのように色で可視化してくれるツールです。「どこがよくクリックされているか」「どこまでスクロールされているか」が一目瞭然になります。
    おすすめツール: Microsoftの「Clarity」は、無料で高機能なので最初の一つにおすすめです。
STEP

分析のフレームワークを理解する

分析を始める前に、物事を整理するための「考え方の枠組み(フレームワーク)」を知っておくと便利です。色々ありますが、ECサイト分析で特に使いやすいのが「3C分析」です。

  • Customer(顧客・市場): どんなお客様が、どんなニーズを持っているのか?(GAのユーザー属性や、サーチコンソールの検索キーワードから分析)
  • Competitor(競合): ライバルのお店はどんな強み・弱みがあるのか?(競合サイトを実際に見て、価格や品揃え、見せ方を分析)
  • Company(自社): 自分たちのサイトの強み・弱みは何か?(GAや売上データから分析)

分析に行き詰まったら、「競合と比べて自社の弱い部分はどこだろう?」「お客様は本当は何を求めているんだろう?」と、この3つの視点に立ち返ってみましょう。

これだけは押さえたい!ECサイトの10大重要KPIと分析方法

準備が整ったら、いよいよ具体的な数字を見ていきましょう。KPIは無数にありますが、まずはサイト全体の健康状態を把握するための「10大重要KPI」に絞って解説します。これらを3つのカテゴリに分けて見ていくと、理解しやすくなりますよ。

【集客】に関するKPI:お客様をサイトに呼び込めているか?

KPI名 これって何? なぜ重要?
1. セッション数
(訪問数)
サイトへの訪問回数のこと。1人のユーザーが朝と夜に1回ずつ訪問すれば「2セッション」。 ECサイトのすべての活動の母数。この数が少なければ、売上が上がることはない。
2. ユーザー数
(UU)
特定の期間内にサイトを訪れた「人数」のこと。1人のユーザーが期間内に何回訪問しても「1ユーザー」。 サイトにどれだけのファン(訪問者)がいるかを示す。新規顧客が増えているかの判断材料になる。
3. チャネル別流入 ユーザーが「どこから」サイトに来たかを示す内訳(自然検索、広告、SNSなど)。 どの集客施策がうまくいっているか、またはいないかを判断できる。

【回遊・CV】に関するKPI:サイト内での行動はスムーズか?

KPI名 これって何? なぜ重要?
4. コンバージョン率(CVR) サイト訪問者のうち、何パーセントが購入に至ったかを示す割合。ECサイトで最も重要な指標の一つ。 サイトの「接客力」や「商品の魅力」を総合的に示す指標。CVRが低い場合、サイト内のどこかに問題が隠れている可能性が高い。
5. 直帰率/エンゲージメント率 直帰率:1ページだけ見て帰った人の割合。
エンゲージメント率:意味のある行動をしたセッションの割合。
サイトの第一印象が魅力的かどうかを示す。エンゲージメント率が低いページは、ユーザーの期待と内容がズレている可能性がある。
6. カゴ落ち率 商品をカートに入れたものの、購入せずに離脱してしまった割合。 「あと一歩」で購入に至らなかった原因を探るための重要な手がかり。購入プロセスの最終段階に課題が潜んでいることが多い。
豆知識

一般的に、ECサイトのCVRの目安は1%〜3%と言われています。まずは自社のCVRがこの範囲にあるか確認してみましょう。

【売上・リピート】に関するKPI:ビジネスとして成長しているか?

KPI名 これって何? なぜ重要?
7. 売上 ビジネスの最終的な成果。 すべての活動の目的。他のKPIと組み合わせて「なぜ売上が変動したのか」を分析することが重要。
8. 顧客単価(AOV) 1回の注文あたりの平均購入金額。 顧客単価を上げる施策(まとめ買い割引など)がうまくいっているかを示す。売上を伸ばすための重要な要素。
9. リピート率 一度購入した顧客が、再度購入してくれた割合。 ECサイトの安定的な成長にはリピーターが不可欠。新規顧客の獲得コストはリピート顧客の維持コストの5倍かかるとも言われる。
10. ライフタイムバリュー(LTV) 1人のお客様が、生涯で自社にもたらしてくれる利益の総額。「顧客生涯価値」。 LTVが高いほど、安定した収益基盤があると言える。1人の新規顧客獲得にかけられる広告費の判断基準にもなる。

4つのステップで実践!ECサイトの課題発見&改善アクション

KPIを理解したら、いよいよあなたのサイトのデータを元に課題を見つけ、改善に繋げていくステップです。ここでは、具体的な4つの分析ステップと、そこから考えられるアクションプランの例をご紹介します。

STEP

アクセス解析で「集客」の課題を見つける

見るべきデータ(Google Analytics, Search Console)

  • 流入チャネル: 自然検索、広告、SNSなど、どの経路からのアクセスが多く、購入に繋がっているか。
  • デバイス比率: PC、スマホ、タブレットのどれで見られているか。それぞれのCVRはどうか。
  • 流入キーワード(Search Console): どんなキーワードで検索してたどり着いているか。
  • ランディングページ: 最初に訪問されることが多いページはどこか。

改善アクション例

改善アクション例

もし…「スマホからのアクセスが8割なのに、PCに比べてCVRが著しく低い」
→ アクション: 実際に自分のスマホで商品購入まで試してみる。入力フォームは使いにくいか?ボタンは押しにくいか?など、スマホでの購入体験(UX)を徹底的に見直す。


もし…「広告からの流入は多いが、エンゲージメント率が極端に低い」
→ アクション: 広告のクリエイティブ(画像や文言)と、リンク先のページ内容が合っていない可能性がある。広告で期待させた内容が、ページできちんと提供されているかを見直す。

STEP

ヒートマップ分析で「サイト内行動」の課題を見つける

見るべきデータ(ヒートマップツール)

  • アテンションヒートマップ: ページのどの部分がよく読まれているか。
  • クリックヒートマップ: どこがクリックされているか。
  • スクロールヒートマップ: ユーザーがどこまでスクロールして離脱しているか。

改善アクション例

改善アクション例

もし…「購入ボタンのはるか手前で、ほとんどのユーザーが離脱している」
→ アクション: ページの冒頭部分に、商品の魅力やメリットが十分に伝わっていない可能性がある。キャッチコピーやファーストビューの画像を見直す。


もし…「リンクが設定されていないテキストや画像が頻繁にクリックされている」
→ アクション: ユーザーが「ここには情報があるはずだ」と期待している証拠。関連ページへのリンクを設定する。

STEP

売上・顧客データで「リピート」の課題を見つける

見るべきデータ(ECカートシステムのデータ, GA4)

  • 購入商品ランキング: どの商品が売れ筋か。
  • 同時購入商品(併売分析): A商品と一緒に買われやすいB商品は何か。
  • 新規・リピート顧客比率: 売上のうち、新規顧客とリピート顧客の割合はどれくらいか。

改善アクション例

改善アクション例

もし…「商品Aと商品Bを一緒に買うお客様が非常に多い」
→ アクション: その2つをセットにした割引商品を作る。商品Aのページで「この商品を買った人はこちらも見ています」と商品Bを推薦(レコメンド)する。


もし…「新規顧客の割合が多く、リピート率が低い」
→ アクション: 初回購入後のフォローが不足している可能性がある。サンクスメールや次回使えるクーポンを送るなど、顧客との関係を継続する施策を導入する。

STEP

競合サイト分析で「自社の立ち位置」を把握する

見るべきポイント

  • 商品・価格: 品揃え、価格帯、送料設定はどうなっているか。
  • サイトの見せ方: 商品写真のクオリティ、商品説明の丁寧さ、デザインはどうか。
  • 集客方法: どんな広告を出しているか、SNSの更新頻度や内容はどうか。

改善アクション例

改善アクション例

もし…「競合は商品の使用感が伝わる動画を積極的に活用している」
→ アクション: 自社でも主力商品の使い方や、お客様の着用レビューなどを動画で作成し、商品ページに掲載してみる。

(応用編)さらに分析を深めるためのRFM分析とは?

応用編

基本的な分析に慣れてきたら、一歩進んで「顧客分析」にも挑戦してみましょう。そこでおすすめなのがRFM分析という手法です。これは、顧客を以下の3つの指標でランク分けし、グループごとに最適なアプローチを考える手法です。

  • R (Recency):最新購買日 (最近買ってくれたか?)
  • F (Frequency):購買頻度 (何回買ってくれたか?)
  • M (Monetary):累計購買金額 (いくら使ってくれたか?)

この3つの指標で顧客を分類すると、例えば以下のようなグループが見えてきます。

R・F・Mすべてが高い顧客:優良顧客

アプローチ:特別なキャンペーンの先行案内や、限定グッズのプレゼントなどで、さらにファンになってもらう施策を打ちましょう。

Rが低く、F・Mが高い顧客:離反優良顧客

アプローチ:以前はよく買ってくれていたのに、最近来ていないお客様。「お久しぶりです」クーポンなどを送って、再訪を促しましょう。

R・F・Mすべてが低い顧客:新規顧客

アプローチ:まずはリピートしてもらうことが目標。商品の使い方をフォローするメールを送ったり、レビュー投稿を依頼したりしましょう。

このように、すべてのお客様に同じアプローチをするのではなく、顧客の状況に合わせてコミュニケーションを変えることで、より効果的なマーケティングが可能になります。

まとめ:分析は改善のためにある。まずは小さな一歩から始めよう

ここまで、ECサイト分析の目的から具体的な手法、そして改善アクションまでを詳しく解説してきました。情報量が多くて少し圧倒されてしまったかもしれませんが、一番大切なことをお伝えします。

それは、「分析は、改善のアクションを起こすためにある」ということです。

データを眺めてレポートを作って終わり、では意味がありません。分析から得られた「気づき(仮説)」をもとに、「じゃあ、これを試してみよう!」と小さな改善を繰り返していくこと。その地道な積み重ねが、数ヶ月後、一年後の大きな成果に繋がります。

完璧な分析を最初から目指す必要はありません。まずはこの記事を参考に、「来週、自社のサイトのスマホでの購入率(CVR)を見てみよう」といった、小さな一歩から始めてみてください。

その一歩が、あなたのECサイトの未来を大きく変えるきっかけになるはずです。応援しています!

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この記事を書いた人

8年以上のEC業界経験を持つECのスペシャリスト。30社以上のECサイト改善を手がけ、UI/UXの改善・CVR向上を実現。デジタルマーケティング戦略の立案から実行・改善までを一貫して担当。

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