- 最近、UI/UXって言葉をよく聞くけど、一体何のことだろう?
- UIとUXって、似ているようで何が違うのかよくわからない…
Webサイトやアプリに携わる仕事をしていると、一度はこんな風に思ったことはありませんか?
UI/UXは、現代のデジタルサービスにおいて「成功のカギ」とも言われるほど重要な概念です。しかし、専門用語のように聞こえるため、少しとっつきにくいイメージがあるかもしれません。
でも、ご安心ください。この記事を読めば、UI/UXの基本から具体的な仕事内容、デザインの進め方、そして成功事例まで、初心者の方でもスッキリと全体像を掴めるようになります。
読み終える頃には、「なるほど、UI/UXってそういうことか!」と、ビジネスの現場や日々のサービス利用で役立つ知識が身についているはずです。それでは、さっそくUI/UXの奥深い世界を一緒に探検していきましょう!
1分でわかる!UIとUXの定義
まず、一番大事な結論からお伝えします。たくさんの情報で混乱する前に、UIとUXそれぞれの言葉の意味をシンプルに理解してしまいましょう。
UIとは、”User Interface”の略です。Interfaceには「接点、接触面」といった意味があります。つまりUIとは、ユーザーと製品・サービスが触れ合うすべての「接点」を指します。
例えば、Webサイトを訪れたとき、あなたが見ているレイアウト、文字のフォント、画像、そしてクリックするボタンのデザイン。これらすべてがUIです。スマートフォンのアプリなら、アイコンの形や操作するときの画面遷移などもUIに含まれます。簡単に言えば、ユーザーが「見るもの」「触るもの」すべてがUIだと考えてOKです。
UXとは、”User Experience”の略です。Experienceが「体験、経験」を意味する通り、UXとはユーザーが製品・サービスを通じて得るすべての「体験」を指します。
先ほどのWebサイトの例で考えてみましょう。「このサイト、文字が読みやすくて情報が探しやすいな」「ボタンが押しやすくて、迷わず会員登録できた!」といったポジティブな感情や感想。逆に「なんだかごちゃごちゃして見づらい」「どこをクリックすればいいのかわからない」といったネガティブな感情。これらすべてがUXです。
UIが「見た目」という部品だとすれば、UXは「使い心地」という全体的な体験価値そのものなのです。
【図解】UIとUXの決定的な違いと密接な関係
UIとUXの基本的な意味がわかったところで、多くの人が混同してしまう「両者の違いと関係性」について、さらに深掘りしていきましょう。この部分を理解することが、UI/UXを正しく把握する上で最も重要です。
例えで理解しよう!レストランにおけるUIとUX
専門用語のままではイメージしづらいので、私たちの身近な「レストランでの食事」に例えて考えてみましょう。
あなたが素敵なレストランを訪れたと想像してみてください。
UIにあたるもの(接点・見た目)
- お店のおしゃれな内装や外観
- 高級感のあるテーブルや椅子
- 読みやすくデザインされたメニューブック
- 綺麗に盛り付けられた料理
- 手触りの良いお皿やカトラリー
これらは、あなた(ユーザー)がお店(サービス)と触れ合う具体的な接点です。一つひとつがデザインされており、お店の印象を形作っています。
UXにあたるもの(体験・感情)
- Webサイトからの予約がスムーズにできた
- 店員さんの接客がとても丁寧で気持ちよかった
- 料理が想像以上に美味しかった
- 店内のBGMや雰囲気が心地よく、リラックスできた
- 会計後、お店を出るまで最高の気分だった
- 「またこのお店に来たい!」と感じた
これら一連の流れを通じてあなたが感じた「満足感」や「感動」こそがUX、つまりユーザー体験です。
ここで重要なのは、たとえ料理の盛り付け(UI)がどんなに美しくても、味がイマイチだったり、店員さんの態度が悪かったりすれば、「良い体験(UX)」にはなりませんよね。逆に、どんなに味が良くても、お店が不潔だったりメニューが分かりにくかったりすれば、心からの満足は得られないでしょう。
このように、個々のUIはUXを構成する重要な要素ですが、UIが良いだけでは必ずしもUXが良くなるとは限らないのです。
なぜ今、UI/UXがビジネスで重要視されるのか?3つの理由
「UI/UXが大切なのは分かったけど、なぜ最近これほど注目されているの?」と感じる方もいるかもしれません。その背景には、現代のビジネス環境における深刻な課題と、それを解決する力強いソリューションとしてUI/UXデザインが認識され始めたことがあります。
理由1:顧客満足度の向上とリピート率の改善
現代は、モノやサービスが溢れ、品質が良いのは当たり前の時代です。同じような機能を持つアプリやWebサイトが数多く存在する中で、ユーザーは何を基準に選ぶのでしょうか?
答えは「使いやすさ」や「心地よさ」といった体験価値です。
優れたUI/UXは、ユーザーの満足度を直接的に高めます。満足したユーザーはサービスに愛着を持ち、ファンとなり、継続的に利用してくれる「リピーター」になってくれるのです。ビジネスにおいて、新規顧客の獲得コストよりも既存顧客の維持コストの方が低いことは広く知られており、顧客満足度を高め、リピート率を改善することは事業成長の生命線と言えます。
理由2:コンバージョン率(CVR)の最適化
Webサイトやアプリには、必ず「目的」があります。ECサイトなら「商品購入」、情報サイトなら「会員登録」、コーポレートサイトなら「問い合わせ」といった、ビジネス上の成果のことです。この成果に至るユーザーの割合をコンバージョン率(CVR)と呼びます。
UI/UXの改善は、このCVRに劇的な影響を与えます。
- 「購入」ボタンの色を目立たせ、押しやすい位置に配置する(UI改善)
- 会員登録の入力項目を最小限に減らし、ユーザーの手間を省く(UX改善)
- 商品の魅力が伝わるような写真と分かりやすい説明文を用意する(UI/UX改善)
こうした一つひとつの地道な改善が、ユーザーの「めんどくさい」「分かりにくい」といった離脱の原因を取り除き、スムーズに最終目的まで導きます。たった一つのボタンの文言を変えるだけで、CVRが数パーセントも向上するケースは珍しくありません。UI/UXデザインは、感覚的な「センス」の世界ではなく、ビジネスの成果に直結する科学的なアプローチなのです。
理由3:ブランドイメージの向上と他社との差別化
「あのアプリは、なんだかオシャレで使いやすいよね」
「〇〇社のサービスは、いつもユーザーのことを考えてくれている感じがする」
優れたユーザー体験は、ユーザーの心にポジティブな印象を刻みつけます。この積み重ねが、「信頼できる」「先進的」「ユーザーフレンドリー」といった強力なブランドイメージを構築していくのです。
製品の機能や価格だけで他社と差別化することが難しくなった現代において、「心地よい体験」という付加価値は、他社には真似できない独自の強みとなります。広告宣伝に莫大な費用をかけなくても、ユーザーが良い体験をSNSなどで口コミとして広めてくれることもあります。
UI/UXデザインの具体的な仕事内容と役割
では、実際に「UI/UXを良くする」仕事は、誰がどのように行っているのでしょうか。ここでは、中心的な役割を担う「UIデザイナー」と「UXデザイナー」の仕事内容について、具体的に見ていきましょう。
※企業やプロジェクトの規模によっては、一人のデザイナーが両方の役割を兼任することも多くあります。
| UIデザイナー | UXデザイナー | |
|---|---|---|
| 役割の例え | 体験をカタチにする専門家 | 体験の設計図を描く建築家 |
| 主な仕事内容 |
|
|
| 追求するもの | どう見せるか(How) | なぜ必要か(Why) 何をすべきか(What) |
UIデザイナーが「どう見せるか(How)」を追求するのに対し、UXデザイナーは「なぜそれが必要か(Why)」や「何をすべきか(What)」を追求する、という違いがあります。両者が協力し合うことで、初めて真に優れたユーザー体験が生まれるのです。
【5ステップで解説】UI/UXデザインの基本的な進め方
優れたUI/UXは、天才デザイナーのひらめきだけで生まれるわけではありません。ユーザーを深く理解し、仮説と検証を繰り返す、科学的で地道なプロセスを経て作られます。ここでは、その代表的な5つのステップをご紹介します。
調査・分析(ユーザーを理解する)
すべての出発点は「ユーザーを理解すること」です。自分たちの思い込みや憶測でデザインを進めるのではなく、客観的なデータに基づいてユーザーの本当の姿を明らかにします。
要件定義(課題と目標を明確にする)
調査・分析で見えてきた課題を元に、「誰の、どのような課題を、どのように解決するのか」というプロジェクトの核心を定めます。ここでペルソナやカスタマージャーニーマップを作成し、チーム全体でユーザー像と体験のゴールを共有します。
構造設計(ワイヤーフレーム作成)
定義した要件を元に、具体的な画面の設計図を作成していきます。この段階では、色や装飾といったビジュアル要素は含めず、情報や機能の配置、画面遷移といった「骨格」の部分に集中します。この設計図がワイヤーフレームです。
ビジュアルデザイン(プロトタイプ作成)
ワイヤーフレームという骨格に、ビジュアルデザインという肉付けをしていきます。UIデザイナーが中心となり、サービスのブランドイメージやコンセプトに基づいたデザインを行い、実際に操作できるプロトタイプを作成します。
テストと改善(リリースと効果測定)
完成したプロトタイプや、実際に開発されたサービスをユーザーにテストしてもらい、フィードバックを収集します。サービスをリリースした後も、アクセス解析やユーザーからの意見を元に、継続的に改善していくことが重要です。
この一連のプロセスは「人間中心設計」と呼ばれ、常にユーザーを起点に考えることで、独りよがりではない、本当に価値のあるサービスを生み出すための羅針盤となります。
【事例紹介】優れたUI/UXで成功したサービス5選
最後に、理屈だけではなく、優れたUI/UXデザインがいかにビジネスを成功に導いたか、具体的な事例を見ていきましょう。きっと皆さんが普段何気なく使っているサービスにも、計算され尽くしたUI/UXの工夫が隠されていることに気づくはずです。
事例1:メルカリ(誰でも簡単な出品体験)
フリマアプリの「メルカリ」は、それまで「面倒くさい」と思われていた個人間取引のハードルを劇的に下げ、市場を爆発的に拡大させました。その成功の核心には、徹底的に作り込まれたUXデザインがあります。
- UIの工夫:出品ボタンが大きく分かりやすい。「バーコード出品」機能で商品情報の入力を自動化。「らくらくメルカリ便」による簡単な匿名配送システム。
- もたらされた体験:これまで出品の経験がなかった人でも「これなら私にもできそう」と感じさせ、わずか数分で出品が完了する成功体験を提供。この手軽さが、多くのユーザーを惹きつけました。
事例2:Slack(直感的なコミュニケーション体験)
ビジネスチャットツールの「Slack」は、Eメール中心だった仕事のコミュニケーションを根本から変えました。単なるチャットツールではなく、「楽しく、効率的に仕事が進む」という優れたユーザー体験を提供したことが成功の要因です。
- UIの工夫:話題ごとに「チャンネル」を作成できるため、情報が整理され見やすい。絵文字リアクションが豊富で、堅苦しくなりがちな業務連絡に感情的なニュアンスを加えられる。直感的なファイル共有機能。
- もたらされた体験:メールのように件名や挨拶を考える必要がなく、本題に集中できる。リアクション機能により、スピーディかつポジティブな意思疎通が生まれ、チームのエンゲージメントを高めます。
事例3:Spotify(パーソナライズされた音楽体験)
音楽ストリーミングサービスの「Spotify」は、膨大な数の楽曲を提供するだけでなく、「自分だけの音楽と出会える」というパーソナライズされた体験を強みとしています。
- UIの工夫:ユーザーの再生履歴をAIが解析し、好みに合った楽曲をおすすめしてくれるプレイリスト「Discover Weekly」。気分やシチュエーションに合わせた公式プレイリストが豊富。洗練されたダークモードのインターフェース。
- もたらされた体験:ユーザーは自分で曲を探す手間をかけなくても、次々と好みの音楽と出会うことができます。サービスを使えば使うほど自分好みに最適化されていく感覚は、ユーザーを飽きさせず、継続利用へと繋げる強力なフックとなっています。
事例4:Amazon(ストレスフリーな購買体験)
世界最大級のECサイト「Amazon」は、「欲しいものがすぐに見つかり、すぐに買える」という体験を極限まで突き詰めることで、多くのユーザーの支持を得ています。
- UIの工夫:一度設定すればワンクリックで購入が完了する「1-Click注文」。膨大な購買データに基づく精度の高いレコメンド機能。購入の判断材料となる豊富なカスタマーレビュー。
- もたらされた体験:購入時の面倒な情報入力を徹底的に排除し、ユーザーの購買意欲が最も高い瞬間を逃さない。関連商品やおすすめ商品によって、新たな「欲しい」を発見する楽しみも提供しています。
事例5:ZOZOTOWN(「探す」が楽しいファッション体験)
日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」は、ただ服を買うだけでなく、「ファッションを探すこと自体の楽しさ」という価値を提供しています。
- UIの工夫:キーワードだけでなく、色や形から商品を検索できる画像検索機能。一般ユーザーやモデルのコーディネートから商品を探せる「WEAR」との連携。非常に詳細な絞り込み検索機能。
- もたらされた体験:目的の商品がなくても、雑誌をめくるようにコーディネートを眺めているだけで楽しい時間を提供。自分の持っている服と似たアイテムから着こなしを探すなど、購入後の活用までイメージさせることで、購買への安心感と期待感を高めています。
これらの成功事例に共通しているのは、単に「見た目が美しい(UI)」だけでなく、「ユーザーの課題を解決し、感動や喜びを与えている(UX)」という点です。
まとめ
今回は、「UI/UXとは何か?」という基本的な問いから、その違い、ビジネスにおける重要性、具体的な仕事内容やプロセス、そして成功事例までを詳しく解説してきました。
- UIは「接点」:ユーザーが製品と触れ合う見た目や操作部分のこと。
- UXは「体験」:その製品を通じてユーザーが得る全ての体験・感情のこと。
- 良いUXは良いUIから生まれる:UIはUXという大きな目標を達成するための重要な手段。
- ビジネスを成長させる:優れたUI/UXは、顧客満足度、CVR、ブランドイメージを向上させる。
- デザインはプロセス:UI/UXは、ユーザー理解から始まる科学的なプロセスを経て作られる。
UI/UXは、もはやデザイナーや開発者だけのものではありません。マーケター、営業、経営者など、サービスに関わるすべての人々が理解すべき「共通言語」となりつつあります。
ぜひ、今日からあなたが普段使っているWebサイトやアプリを、「どんなUIの工夫があるかな?」「このサービスはどんなUXを提供してくれているんだろう?」という視点で観察してみてください。きっと多くの発見があり、あなたの仕事や日々の生活をより豊かにするヒントが見つかるはずです。
この記事が、あなたのUI/UXへの理解を深める一助となれば幸いです。

